午前0時、夜空の下で
初代魔王の時代は、心の想像以上に不安定な印象を受けた。

初めて黎稀の話を聞いた時は、圧倒的な力で魔族たちを支配したのだろうと思っていたが、十六夜の存在が黎稀の地位を揺らがしたようである。

「二人は支え合い、忙しくも幸せな時を過ごしたのだろう。じゃが、そんな時はすぐに終わってしまった。
……二人の間に、御子ができたのじゃ。中級魔族程度の力しか持たぬ御子が」

「そんな、それじゃあその子は王の息子でありながら、父親の後を継ぐことができなかったのですか?
そういえば、黎国は世襲制じゃなかったような……」

ふと漏らした心に、皇極は力強く頷いた。

「その通りじゃ。御子に魔王の力は受け継がれぬ。だが魔界を統べるには黎稀王に次ぐ魔力の持ち主でなければならぬのじゃ。
そこで黎稀王は、不思議な力を有する一族に次期魔王について占わせた……ノースヴァン家、と言ったか。
ノースヴァン家の者は直ちに占い、次期魔王候補は時が来れば王のもとに現れると王に進言した。
次期魔王候補は剣を携えており、魔王の遺体をその剣で貫くことにより、魔力の譲渡が行われるはずだとも申したそうじゃ」
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