午前0時、夜空の下で
「魔族に、理性がないということですか……?」

「いや。ただ、魔王はあらゆる意味で特別なのじゃ。
それまでどれほど強欲なものであろうと、魔王に即位した途端――すべての欲求を失っておる。
我らはそれを理性の現れと呼んでおる。変な話じゃが、魔王に即位すると多くの者が人格を変えると言われておる。
魔王自身に変化はなく、ただ何も求めなくなるのじゃ。かつてどれほど残虐な行いをした者であろうと、即位すれば落ち着く。
魔力を受け継ぐと同時に、黎稀王の記憶を受け継いでいることがその原因らしいが」

「記憶、ですか?」

「記憶じゃ。ただ一途に、十六夜姫を愛した記憶。それが魔王たちに変化を与える」

まるで時が止まったかのように、心の震えが治まった。

目を見開いて、ひたと皇極を見つめる。
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