午前0時、夜空の下で
「なんと――恐ろしいほどに深い愛であろうか。死してなお、十六夜姫を愛する想いは魔王たちを渡って生き続けるのじゃ。
歴代魔王たちは天族を疎いながらも、十六夜姫の面影を追い求め続けておる。
その証拠に、彼らは誰一人として、正妃を娶りはしなかった……」

心の瞳から、はらりと涙が零れ落ちる。魂が震えているようであった。

妃月が愛しくて、愛しくて、初めて出逢った時からずっと、彼女の想いは妃月に囚われていた。

それは、数千年の時を越えてなお、生き続ける想い。

「冷泉王も黎稀王の意向を汲んで、十六夜姫を護ろうとしたが、彼女は黎稀王の死後、絶望のあまり自ら後を追って亡くなってしまったのじゃ。
その無念もまた、冷泉王を苦しめたであろう。せめて前王の御子だけはお守りしようと、養子として引き取ったとか。
レイザという名の、黎稀王によく似た利発な御子だったそうじゃ。
後に冷泉王の一族の長姫を貰い受け、義父の代わりに一族を纏め上げた優秀なお方ぞ。
レイザ殿の血を継いだ一族は、今は夜族と呼ばれていたのであったな。
黎稀王の願いを受け継ぎ、彼の一族は代々長姫が族長を務めておるはずじゃ」
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