午前0時、夜空の下で
「陛下!?」

驚いたのはクロスリードだ。

声を上げて王が笑う姿など、彼は生まれて初めて見たのだ。

「くくっ……、使用人の手伝いか。まったく、見事に予想を裏切ってくれる。どこかの部屋で怯えているだろうと思っていたが」

妃月の言葉に、クロスリードも苦く笑った。

「私もです。夜がくる前に、大分脅しておきましたが……無駄でしたね。いつまでも隠れていたって埒が明かないとおっしゃって、自ら女官長や侍女頭のもとへ挨拶に伺っていましたよ」

妃月は未だに肩を揺らして笑っている。

「あの、陛下……ココロ様の血を飲んだというのは、本当ですか?」

クロスリードの問い掛けに、妃月はあっさり頷く。

その瞳が妖しく輝いたことに、クロスリードは眉根を寄せた。
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