午前0時、夜空の下で
黎稀王の果てしない愛が、心を追いつめてゆく。

カルマは心に妃月を殺せと言っていたのだ。

黎稀王と十六夜姫の血を受け継ぐカルマが。

「改めて、妾からも頼みたい。女王になってくれぬかえ? 
……なぜ自分が、と思うであろう。じゃが、妾にはわかる。そちには申し訳ないが、天王は予知の力を有しておるのじゃ。
妾の力は、そちが次期魔王であると――女王であると告げておる」

強い瞳で心を見つめた皇極は、結局一滴も酒を飲むこともないまま、並べられた料理を脇に退けた。

真摯な光を宿した瞳で、真っ直ぐ心を見据える。

「世界の均衡も限界なのじゃ。これまでなんとか均衡を保っておったが、黎稀王の再来と名高い妃月王の魔力によって、均衡が一気に崩れつつある。
生粋の魔族でもない――むしろ天族と人間の血をひくそちが魔王となれば、妃月王の魔力を受け継いだとしても、大分魔力を抑えられるであろうが……このまま妃月王が即位し続ければ、いずれ均衡の歪みは人間界にも影響するであろう。
そちが人間界にいた時分にも、妃月王が覚醒した際、均衡が崩れたことで歪みが生まれ、魔族が人間界に流れ込んだはずじゃ。
このままでは、いつか人間界に魔族が溢れ、人間はみな死ぬことになる。
……家族を守りたくはないかえ?」
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