午前0時、夜空の下で
頭が狂ってしまいそうだった。

むしろ狂って逃げることができたなら、と心は頭の片隅で願った。

そしてそんな心を嘲笑うかのように、唐突に一振りの剣が光を放って現れる。

「魔剣――新月。剣もそちを認めたようじゃ。心よ、今よりそちは次期魔王候補じゃ」

皇極の声が死刑宣告のように心を追い詰め、縋りついていた逃げ道を絶った。






「お待ちしておりました、ココロ様。終の継承の見届け人を仰せつかっております、アルジェン・オズイスティンと申します」

皇極の導きによって久遠の森に降り立った心に、頭を下げる者がいた。

剣を腕に抱いたまま、心は暗い瞳でアルジェンを見つめる。

「これまでの数多くの無礼をお許しください。我らオズイスティン家一同は、終の継承を見届け、新たなる王として即位なさるココロ様の正当性を証明することを誓います」
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