午前0時、夜空の下で



やがて馬車から城門が見え始め、心はいよいよ緊張を感じていた。

ゆっくりと馬車が止まり、御者として馬を走らせていたアルジェンが手を差し出してくる。

剣を抱いたままアルジェンの手を取り、のろのろと地に降り立った心は、顔を上げた瞬間目に入った光景に息を呑んだ。

「――我ら夜族一同、ココロ様のお傍にお仕えすることをお許しいただきたく参上いたしました」

最前列にて最敬礼をとるカルマを筆頭に、黒い集団が王城に集まっていたのである。

漆黒を最上とする魔界において、その色を身に纏うことを許されているものは少ない。

夜族が許されているのは、彼らが初代王の御子を祖先とする由緒正しき血統であるためだ。

その高貴なる血ゆえに自ら頭を下げることはないという一族を従えた心に、城の者たちは言葉を失った。

そしてカルマの隣で、軍服に身を包んだキシナもまた最敬礼をとって心を迎えた。
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