午前0時、夜空の下で
離れた場所で同じ時間帯に殺された人間もいるため、犯人は複数存在する可能性が高いとされているが、一人も捕まっていないのだ。

町の人々は一向に解決される気配のない事件を恐れ、あまり外を立ち歩かないようになり、小学校や中学校では、集団登校が行われていた。

万が一登校中に襲われるようなことがあったら、と子供を休ませる親も珍しくない。

学校ではどこかの国の殺人組織に目を付けられたなど、根も葉もない噂が飛び交っていた。

報道番組ではここ最近の被害が小さな町の中に限られている所為か、有名大学の教授や元検事がしたり顔で事件を分析し、それがさらに人々を混乱に陥れた。

見えない恐怖から、まるで夜逃げのように町を逃げ出す者もいたのである。

それほど、町に住む人々は不安に苛まれていたのだ。

「平気だよ、佐伯さんのお屋敷なんて、すぐそこだし。あんまり家を出られないから、数日分の本をまとめて借りようと思ってるの。書庫に篭るわけじゃないからすぐ帰るよ。じゃあね、行ってきます!」

「あっ! 心!!」

心は奈美の声を振り切って家から走り出た。

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