午前0時、夜空の下で
「私はあなたが忌々しい」

ぽつりと零された言葉が、心の耳に飛び込んでくる。

顔を向けると、クロスリードの凪いだ瞳が心を見据えていた。

死の淵にあるというのに、信じられないほど静かな瞳だ。

その瞳に見据えられ、喋ってはだめだと言いかけた心は口を閉じる。

「黎王に即位してすぐの頃、陛下がぽつりとおっしゃっていました。……何もほしいと思わないのに、初代王妃の存在に触れると落ち着かなくなる、と。
私もその時初めて知りましたが、王位を継承すると黎稀王の魔力だけではなく、その記憶までも受け継いでしまうそうですね。
歴代の魔王陛下方はみなその感情に苦しみ、それでも天族を求めることはできないと感情を抑えたそうです。
陛下もきっとそうなさるのだろうと、そう思っていました」
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