午前0時、夜空の下で
ゆっくりと言葉を紡ぎながら、刻々とクロスリードの身体は死の闇へ引き摺り込まれていった。

痛みがあるにも関わらず、それでも彼は言葉を止めようとはしない。

「ですがあの方は歴代王の誰よりも、黎稀王と似ていらっしゃったのです。有する魔力の量も質も、文献にあるものを擬えたかのようでした。
そして受け継いだ感情は、歴代王の誰よりも強くあの方に影響を及ぼしてしまったのです。
誰よりも強く……初代王妃様を求めてしまった」

心の視界が歪み、瞼が熱を持つ。

何度耳にしても、黎稀王の想いは切なくなるほどに一途だ。

想いだけが王たちを伝い、そうして十六夜の魂を受け継いだ心に届けられた。

黎稀王の想いに影響されてしまった王たちは、どれほど苦しんだであろうか。

魔族として天族を厭い、魔王として死んだ十六夜を求め続けるという、相反する理性との葛藤。

永遠に昇華されることのない、想い。
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