午前0時、夜空の下で
「陛下が人間界に行った理由を教えてくださったのは、魔界に戻ってきた夜のことでした。
天界の皇極様から、予知の力で初代王妃様の魂が、人間界に現れると聞いたのだそうです。
逢えると思った瞬間には、人間界に降り立ってしまったのだとおっしゃっていました。
しかしまだ人間界に初代王妃様の魂はありませんでした。そこで陛下は、人間界で初代王妃様の魂が現れるのを待ったのです。
己の魔力が均衡を歪めるのを防ぐため、天族の見張りを受け入れ、自ら囚われてまで……待ち続けたそうです」

涙が冷たい床に零れ落ち、床を紅く染めていたクロスリードの血と混ざり合った。

彼の血は人間と同じ赤なのかと、熱に浮かされた頭で考える。

「長き時を眠って過ごし……そして出逢ったのがあなたでした」
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