午前0時、夜空の下で
「――妃月さま!!」

手放したはずの新月が深々と妃月を貫いており、手を離そうとしても動かせない。

青ざめる心の目の前で、妃月の身体を包むように煌めく光が現れた。

それは新月を伝って、心へと流れ込んでくる。

焦る心をよそに光はだんだんと弱くなり、比例して心の中に変化が訪れた。

終の間に入ってから感じていた静電気のような微かな痛みが、徐々に消えていったのだ。

――まさか。

全身が凍りつく。

感情とは裏腹に、心の身体には力が満ちていた。

終の間にいながら何も感じないほど、心の魔力が強まっているのだ。

新月から自由になった手を、恐る恐る妃月に伸ばし、心は微動だにしない身体を揺らす。

「妃月さま……目を開けて、妃月さま……」
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