午前0時、夜空の下で
終の継承を成してしまった今、妃月からは生気が感じられなかった。

煌めいていた光は消え失せ、どんなに声をかけても妃月は目覚めない。

「嘘でしょう? 起きてよ……ねえ、離れないでって、言ったじゃない……」

水に濡れた妃月の顔は美しく、その身体は新月に貫かれ生々しい紅に染まっていた。

すべてを見届けたアルジェンが、ひたすらに妃月を揺さぶる心を痛ましく見つめたが、意を決して声を掛ける。

「ココロ様、これで終の継承は成されました。直ちに即位の儀を執り行いますので、どうぞお戻りください」

だが心は、アルジェンの声などまるで耳に入ってない様子で妃月だけを見つめている。

妃月の死が受け入れられず、涙すら流せない心の後姿はあまりに痛々しく、アルジェンはやるせない思いで目を逸らした。
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