午前0時、夜空の下で
そして大きな扉が少女の前に立ちはだかる。

少女に続いて扉の中に入った心は、一瞬呼吸を忘れた。

「……妃月さま!?」

そこには地下牢に囚われ、昏々と眠る麗人の姿があった。

部屋中には濃密な魔力が充満し、息苦しいほどだ。

「どうして……」

少女の囁きで麗人の瞼が微かに動き、彼はゆっくりと目を開けた。


相も変わらず美しい魔王が、そこにいた。


戸惑う少女の傍らで、心は両手に顔を埋める。

つんと鼻の奥が痛んで、目頭が熱くなった。

妃月が言葉を発し、魔力で牢の外に出ると少女に歩み寄る。

心はとうとうその場に座り込み、密やかに涙を零した。

欠けていた記憶が、まるで霧が晴れるかのようにはっきりと映し出されてゆく。
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