午前0時、夜空の下で
妃月は少女が十六夜の魂を受け継ぐ者であると気づいたのだろう。

残酷な言葉を口にしながら、彼は決して少女を傷つけようとしない。

「お前の血も体も、私に捧げろ。全てを私に捧げると……私のモノになると誓うのなら、」

「なります」

少女と妃月は契約を交わす。

今はまだ、受け継いだ魂がはっきりと覚醒していないのだろう。

少女は妃月に抗いようのない魅力を感じながらも、家族のためだと思い込もうとしているようであった。

それでも少女は、彼の手の内に堕ちる。

少女は必死で言葉を紡ぎ、妃月は――……

「あっ……!」

目を瞠る心の前で、妃月は少女の唇を己のそれで塞いでいた。

頭の片隅に、黎稀の言葉が蘇る。

『じゃあ、俺たちは天族の流儀を真似しようか。愛しいひとを愛でるには、唇を合わせ、舌を絡ませて――』
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