午前0時、夜空の下で
今その手紙は雫と翔太の手に渡っている。

最初はしんみりした表情だったのだが、しばらくするとにやにやし始め、たまに吹き出している。

「ミルフィーユって!」

「あいつ命名センスねえのなー」

騒ぐ子どもたちをよそに奈美は涙を拭うと、昴の腕から飛び出し、宗一郎の隣で魔界の話をねだりだした。

妃月の容姿について聞くと、きゃーなんて歓声を上げている。

まだまだ愛娘が心配で仕方ない昴は、同じように心配しながらそれを面に出さない奈美に感心した。

いざという時、強いのは女性なのだ。

「佐伯さん、心とはもう二度と会えないのでしょうか」

「まったく会えないわけではありません。世界の均衡に障らない程度ですが……数年に一度は、時間を作ることは可能でしょう」
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