午前0時、夜空の下で
佐伯の返事を聞き、昴もようやく覚悟を決めた。

「向こうの人たちに伝えていただきたい。心をお願いします、と」

昴と目を合わせ、佐伯はしっかり頷いた。

彼らの後ろで、子どもたちが楽しげな笑い声を上げる。

「いやあ、まさか実の妹がこんな素晴らしいネタになってくれるなんて……! 
佐伯先生、今度の新作は心をモデルにした異世界トリップファンタジーにします!
原稿見てくださいねー」

「抜け目ないですね、雫ちゃん」

にっこりと笑う雫に、佐伯は仕方ないと言いたげに相好を崩した。

彼にとって幼い頃から見守ってきた子どもたちは、自分の孫も同然なのだ。

心たちが洋館に籠って本を読み漁っていた頃が懐かしい。

胸の内で、彼女の幸せをただ祈る。
< 546 / 547 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop