午前0時、夜空の下で
夜会の最中は皆忙しいらしく、城の奥では誰一人としてすれ違うことはなかった。

警護の兵士すら見かけないのは、妃月の魔力があまりにも強いため、護衛の必要がないからだというクロスリードの言葉を思い出す。

胸が、騒ついていた。

先程のやり取りを思い出す。

美しいカザリナ。

誰もが認めるカザリナ。

王の自室を知っている……かもしれない、カザリナ。

ドクドクと嫌な音を立てる心臓に、震える手を置いて。

心は視線の先にある妃月の自室を睨みつけた。

扉が、わずかに開いている。

足音すらも立てないように、そっと近づいた。

そして、コクリと喉を鳴らして中を覗き込もうとしたとき――……

冴え渡る聴力は、何よりも聞きたくないものを捕らえてしまった。



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