午前0時、夜空の下で
――喘ぐ声。

――衣擦れの音。

…………乱れる、呼吸。

それらが何を意味しているかなんて、いくら幼い心でもわからないはずがない。

ゆっくりと、心は扉から離れる。

決して、音を立てないように。

彼らが、気づかないように。

時間をかけて、妃月の部屋が見えなくなる位置まで離れた心は、身を翻して走り出した。

切なくなるような、苦しくなるような、あの、声が。

擦れてしまうほどに喘いでいた、あの声が。

――耳にこびりついて離れない。

冷たい回廊は、心の足の温度を奪い、ジンジンと痺れている。
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