午前0時、夜空の下で
目蓋の裏が熱くなり、視界が歪んだ。

惨めだった。

息が、切れる。

倒れそうになる身体を叱咤して走り続け、城の奥にある図書室に駆け込んだ心は、ずるずると崩れ落ちた。



仕事の合間、度々訪ねていた図書室。

物語が好きだと言った心のために、妃月はクロスリードに命じて、世界中から物語を集めてくれたのだ。

そのため、歴史書や魔力構造など難しい本ばかりだった図書室は、いつのまにか物語で溢れ返ってしまっていた。

「っ……ひ、づき、さまっ……」

忙しいクロスリードに、この世界のことを教えてやれ、と命じたのは妃月だった。

人間である心を狙う魔族は多いからと、軍の指揮をとっているアルジェンに護衛させたのも妃月だった。
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