午前0時、夜空の下で
「っく……ひづきさま……」

――心にとって妃月だけが、この世界で唯一の存在だった。

でも。

妃月には心の代わりになる存在など、掃いて捨てるほどいて。

気づかなかった……否、気づこうとしなかった自分を、心はただ愚かだと感じた。

「……っうあぁぁぁ……」

誰もいない、静かな部屋で。

哀しい泣き声だけが響いていた。



ふと、耳に届いた音。

ゆっくりと顔を上げると、涙で霞んだ視界に鮮やかな蜜柑色が映る。

「……メイジー?」

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