午前0時、夜空の下で
「私、存じております……人間界に戻る方法を。今ならきっと帰れますよ?」

今にも手を伸ばして縋りつきたくなるほどの、甘い甘い誘惑。

「だめ……」

無意識に、そう呟いていた。

メイジーの目が一瞬鋭くなったことに気づかず、心は目を閉じ、ゆっくりと深呼吸をする。

「帰らない。私、妃月さまのモノになるって決めたの」

はっきりと言い切った後、頭の中で反芻し、自らの意思を確かめるように頷いた。

自分がこの世界にきたのは、妃月と誓ったからだ。

彼に愛されるために、この世界にきたのではない。

そう考えると、気持ちが一気に楽になった。

「心配かけてごめんなさい、メイジー。私、もう大丈夫だから」
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