午前0時、夜空の下で
いつもなら喜々として飛び込む書庫を通り過ぎ、さらに奥へと進む。

普段、こんな奥にまで入ることなどほとんどなかった。

心がこの奥に進むことを、口には出さないものの、佐伯が嫌がっているように感じたからだ。

初めて来たときに探検と称して、洋館の中を歩き回ったことはあったが。

回廊の突き当たりまで辿り着き、心はそっと耳を澄ませる。

――ピチョン

「下……?地下、から?」

心はそう呟くと、ちらりと左手にある扉を見つめた。

初めてこの洋館に来た日に、地下も案内してもらったことを思い出しながら、ゆっくりと地下へ繋がる扉を開く。

――ピチャン

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