午前0時、夜空の下で
心に森を歩いた経験などあるはずもなく、まして今、彼女はドレス姿だ。

唯一の救いといえば、日が高く昇っている点だろうか。

太陽の位置を目印に歩けば、一定の方角に進むことができる。

それにここで立ち止まっていても、おそらく助けは来ないだろう。

心の記憶が正しければ、すべての原因はカザリナ。

魔界でも有力な貴族の娘であるカザリナ。

妃月が気に入っている……かもしれない、カザリナ。

もやもやと胸のうちに渦巻くのは、嫉妬か、憎悪か。

心は思い切るように首を振ると、ドレス姿のまま森の中へと入っていった。



全身から吹き出る汗。

乱れる息を整えながら、一歩一歩足を進める。

一体、歩き始めてから何時間経ったのだろうか。
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