君がいた夏
「そんなこと………」
「いや、いまのあいつは、なにしでかすか分からない」
先輩は私の手をとると歩き始める。
「先輩、でも多分、もし先輩が話していたとしても、そうなると思うんです」
「……………でも」
「先輩」
私は足を止める。
苦しそうな先輩の顔がこちらを振り向く。
「何て顔、してるの……」
私は自然とタメ口になって、先輩に抱きついた。
「私、なんにもされてないよ?……ね?大丈夫」
「……文化祭の日、紀衣はわざと、お前に案内させたんだ……菜穂がどんな苦しんでるのかも分かってて…」
「………うん」
先輩は優しく抱き返してくれる。
「ごめん。……もう苦しめたりなんてさせない」
「そばに、いてくれるんでしょ?」
私は笑って見せた。
当たり前のように笑顔の先輩が頷こうしたとき…
ピりりりりりり
何故かすごい、大きな音で携帯がなった。
「ごめん、俺だ………」
体をはなして先輩は電話に出る。
「はい、あぁ、桐か………え?」
先輩の表情が焦りと驚きに変わる。
そして…