君がいた夏



桐さんの電話を受けてから
すぐに、私たちは病院へ向かった。

私はいかないほうがと言ったんだけど
先輩がちゃんと伝えるためにもついてきてくれと震える体で言ったから、私はついていくことにした。



「桐!」
「あぁ、優陽………え、菜穂?」
「こんにちは」

桐さんは私を見て目を見張ったけど
すぐに先輩を見つめて

「大丈夫だ。貧血だって……かなりひどい方らしいけど、病室にいるよ……目は、覚めてる」
「そうか……」

先輩は胸を撫で下ろす。

「先輩、病室に行ってきたら?」
「あぁ……菜穂ちゃん、ついてきて」
「「え?」」

私と桐さんの声が重なった。

「優陽、今は……」
「駄目だ。紀衣は、もう……強くならなきゃいけない」
「だけど!」
「俺も、もう……限界なんだ……」

先輩の言葉に少しひっかかる。

どういう、こと?
限界?

桐さんは少し悩んでから口を開いた。

「菜穂ちゃんに、話してからにしろ……」

そう言って桐さんはいなくなった。

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