君がいた夏


「わ、わたし………?」
「あぁ。紀衣が正気を取り戻してすぐ、紀衣は小さな声で、呟いた。………高嶋、菜穂って」
「………そんなっ………」

私は混乱してた。

「………だから、菜穂を遠ざけた。紀衣が文化祭に来て、菜穂になにかするんじゃないかって、不安になった」
「先輩………」
「ごめんな………俺のせいで、ごめん。……だけど、だからこそ………紀衣は強くならなきゃいけないんだ。あいつの弱い心があーさせてる」

だから、3人で話さなきゃいけない。
でも怖いと、私を失うことが怖いと先輩は震える体で言った。

私はゆっくり抱き締めた。

「………先輩、守ってくれるんでしょ?」
「菜穂……」
「私ね、怖くなんてないよ……先輩がいる。優陽が、いるから」
「あぁ………守ってみせる」

そう言って先輩は力強く抱き締め返してくれた。
 
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