君がいた夏



病室の前で深呼吸をする。
大丈夫。
先輩がいる。

「………いくよ」

先輩が扉に手をかける。

ガラッ

「………紀衣?」
「優ちゃん?!………ぁ」

紀衣さんは、先輩をみて笑顔で目を輝かせたけど
すぐに後ろにいる私を見てその笑顔は一瞬で消えた。

「こ、こんにちは……」
「………何しに来たのよ………嫌がらせ?」

紀衣さんは私を見つめてそう冷たく言った。


「違っ………」
「紀衣!」

私が否定しようとしたとき
紀衣さんに詰め寄ったのは先輩だった。

「いい加減にしろ……お前、どうしたんだよ」
「優ちゃん?……何怒ってるのよ、どうもしてないわ。………ただ、優ちゃんがいないのが耐えられないのよ」

その顔は笑っていたけど
私が見たことのある紀衣さんの笑顔じゃなかった。

「………紀衣、俺はもう……お前のそばにはいれないんだよ」

先輩が苦しそうに紀衣さんに言う。
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