君がいた夏


「………その、女がいるから……だったら……」
「紀衣?」

私はその顔をみて怖くなった。
嫉妬とかそんなレベルじゃない。

好きな人を自分のものにするためなら
他人を傷つけてもいいと、そう思ってる顔だ。

私は先輩の話してくれた話を思い出す。

『その手にはハサミを握ってた』

ハサミ?

私はその瞬間、紀衣さんの近くにある果物ナイフに気づいた。

「だめっ!」

私が叫んだのと紀衣さんが果物ナイフをとって
突きつけたのとは同時だった。

狙いは、私じゃない。


「先輩っ!」
「菜穂!」

私は先輩の前に出た。

「優ちゃん、私とずっと一緒にいるんでしょ?!」

紀衣さんがそう叫び
ナイフが振りおろされた。

「っ!!」

肩に痛みが走る。
少し切られたようだった。

「菜穂っ!!!!」
「おい、大丈夫………って、紀衣!?」

先輩の叫ぶ声で気づいたのか桐さんが入ってくる。
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