君がいた夏
「よろしくね」
つられて笑いながら私は
川上くんに手をふりコンビニをでる。
「ふぅ・・・」
コンビニを出ると蒸し暑い風が私の頬を撫でる。
昼間の先輩を思い出す
『・・・・・菜穂ちゃんは何も知らなくていい』
そう寂しそうに呟いた先輩。
知らなくていいってどういう意味なんだろう。
先輩・・・
夏の間に
あなたに何があったの?
あなたの温かかった目を
あんな冷たいものに変えた出来事は何ですか?
「・・・・先輩」
亡くせない。
こんな強い想いを1日で無かったものになんてできないよ。
あなたをずっと思ってた
大きな想いを胸に抱いたまま
この夏まで過ごしてきた。
行き場を失った思いは
どうすればいい?
「菜穂?」
「あ」
気がつくと
家の近くまで歩いてきていた
お母さんが笑って庭から顔を出す
「早く入りなさい」
「うん」
私は家にはいるとすぐに
自分の部屋に駆け込む
「っ」
泣いたって何も変わらないけど
泣かずにはいられなかった
先輩は
どこにいますか?
苦しんでる?
そんな質問に
自分であきれて
布団に顔を埋めたまま
「・・・・馬鹿みたい」
小さく呟いた。