君がいた夏
「だけど、どんどん俺に依存して、紀衣が紀衣じゃなくなってくのが、わかってきてからは、怖かった」
先輩は紀衣さんを見つめて言葉を続ける。
「……俺が、もっとお前を強くさせてたら、紀衣はこんな風にはならなかったのかもな………紀衣には俺は必要ないよ」
優しく、でも、きっぱりと
先輩はそう言った。
紀衣に俺は必要じゃない、と。
「………お前のもとから離れることはないよ。どんなおかしくなっても、紀衣のことを嫌うことはないと思う……でも、それは………恋愛としてじゃない」
先輩はゆっくり握ってた手を離す。
「俺が、守りたくて、ずっとそばにいたいと思うのは……菜穂だけなんだ……だから、たとえ紀衣でも、菜穂を傷つけることだけは許せない」
先輩が、ゆっくり紀衣さんから離れようとしたとき
「…………どうして、よ……?」