君がいた夏
病院を出て中庭に来たとき
ふいに先輩は立ち止まった。
「先輩?」
私は顔をあげる。
「菜穂ちゃん……」
「はい」
先輩は私の手を握る。
その力が少し強くて私は思わず先輩の目を見てしまう
「やっぱり、俺は紀衣と話してくる」
「え………?」
「………いま、わかってもらわないと、俺は、一生後悔すると思う……」
先輩は私の頬に手をあてる
「そんな不安そうな顔すんなよ……」
先輩が困ったように笑った
「大丈夫。俺はもう、離れたりしない………菜穂ちゃんを悲しませることはしないから」
「………誓って……」
私は思わず口に出していた。