君がいた夏
「もう、絶対、離れたりしないって………急に消えたりなんてしないって………」
「菜穂ちゃん?」
「……もう、あんな、苦しい思いをするのは嫌だよ……先輩が一人で傷ついてるのを見るのも、嫌だよ………だから…」
私は先輩の目を見つめる。
頬には私の涙がつたう。
それを先輩が優しくぬぐってくれる
「だから、何?」
「っ………だから………必ず帰ってきて…私は待ってるから…絶対、また隣で笑ってて…」
「菜穂ちゃん………っ……」
先輩がゆっくり私のおでこに自分のおでこを重ねる
「約束するよ……もう絶対…いなくならない。…隣で笑ってるよ……だから、待ってて」
優しく響く先輩の声。
私は離れてく先輩の温もりを感じて笑う。
「先輩、いってらっしゃい」
「あぁ……いってきます」
私たちは手を繋いだままそうやり取りをして笑いあう。
そして
ゆっくり、ちょっとずつ
私たちの手は離れていった。