君がいた夏
そこには、さっきよりは冷静になった紀衣が
窓を見つめていた。
ゆっくり紀衣は顔を向ける。
そして目が見開かれた。
「………どうして?」
「……紀衣と話さないといけないって思ったから…」
「菜穂ちゃんは?」
「………あの子は待ってくれてるから、大丈夫だよ」
紀衣は少し視線を落とす。
「……なぁ、紀衣。俺はお前が苦しんでるときそばにいなきゃって、俺が苦しめちゃダメだって思い込んでお前のそばにいた」
「………うん」
「でも、それはただ自分が安心したいだけだった。お前の事なんて何も分かってない行為だったんだ。罪悪感とか責任感とかでお前といても、紀衣が幸せなはずないのにな……」
俺は少し笑う。
そんな俺を見て紀衣は少しためらいがちに俺の手をとった。
「………全部、優ちゃんの気持ちも全部、わかってたよ」
「え?」