君がいた夏


「……そりゃ、幼なじみだよ?わかるよ……優ちゃんがずっと菜穂ちゃんを好きで、私と一緒にいたのは優ちゃんの優しさだって知ってたよ」
「紀衣」
「でも、それでも、優ちゃんがいてくれるなら、構わないって思ったけど……結局はただ辛いだけで、どんどん優ちゃんは遠くにいっちゃうんじゃないかって、不安で仕方なくなった……」

紀衣が俺の手を握っている手に力を込める。

「私の心が、弱かっただけ……自分の心をコントロールできなくなって、でも、冷静になってから自分の行動すべてに後悔して…」
「………ごめん」
「なんで、優ちゃんが謝るのよ……」
「うん」

握られた俺たちの手に一粒の雫が落ちた。
俺が顔をあげると紀衣は泣いていた。

「ほんとは、私が、菜穂ちゃんのもとに行っていいよって、もう私に縛られなくていいよって伝えなきゃいけなかったの………それができなくて、優ちゃんに依存して、結局、優ちゃんを苦しめた」

紀衣は頭を下げる
相変わらず綺麗な髪の毛が動きに合わせて垂れ下がる

「ごめんなさい。優ちゃんに甘えて……」

俺はなにも言えずにそれを見つめる

「………優ちゃん」

ちょっとずつ顔をあげて紀衣が俺の名前を呼んだ。

「ん?」

震える声を絞り出す

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