君がいた夏
「……もう、私に、縛られなくて……いいよ」
そう紀衣はたしかな声で言った。
「……菜穂ちゃんと幸せになって……私も、ちょっとずつ、強くなるから……」
布団に涙が染みていく。
紀衣と…
俺の涙が。
「……紀衣……」
「…それと、私ね、優ちゃんのことが好きだったよ、大好きだった」
「……ありがとう…でも、ごめんな。俺は菜穂ちゃんが好きだ」
「うん、ちゃんと、ふってくれてありがとう…」
紀衣は悲しげにでも優しく笑ってくれた。
「今度、私にいい男ができたら、菜穂ちゃんとダブルデートしようね」
「あぁ、約束だ」
俺たちは笑いあって
そして、同時に俺の中の何かが解き放たれた気がした
「それじゃ、俺はいくよ。また、来るから」
「…うん。あと、菜穂ちゃんに今度一人で訪ねてもらえるか聞いてくれる?」
「別にいいけど……一人でか?」
「そうよ」