君がいた夏
「わかった、伝えとくな」
「よろしくね」
俺は手をふって病室を後にした。
病室を出て、中庭を見渡せる場所を通りかかったとき
ふと、中庭で花を見てる菜穂ちゃんを見つける。
「……ふっ」
俺はその姿を見て自然とほほが緩む。
俺が中3のころ、俺は菜穂ちゃんと出会って
恋をした。
幼かった俺は菜穂ちゃんと離れることを選んだ。
でも、ずっと後悔してた。
たくさん、悲しませた。
だけど、もう絶対悲しませたりなんてしない。
君の笑顔が俺を幸せにさせる。
俺は自然と走り出す。
そして、愛しい愛しい人を見つける
花に囲まれた菜穂ちゃんが俺に気づいて笑う。
「………菜穂ちゃん」
俺はきつくきつく抱き締める
「せ、先輩?」
「………好きだ……絶対、離さない……」
小さい声で俺は2年前の後悔と
これからの決意を胸に刻んでそう呟いた。
「………私も、大好きです」
菜穂ちゃんの小さなか細い声が返ってきた。
絶対に、離さない――――