君がいた夏
それぞれの道
「…………先輩……」
私は抱きしめられながら
先輩に声をかける。
外はすっかり暗くなってしまった。
「………ごめん」
そう言った先輩はゆっくり体を離して
その顔が月明かりに照らされていく。
少し目が反射してキラキラしている。
「……泣いてるんですか……?」
「……違うよ」
「でも」
「大丈夫だから」
私が心配になって問うと先輩は穏やかな笑顔で私の頭を撫でた。
「ただ、菜穂ちゃんと離れたくないと思った……」
先輩は撫でていた手を私の頬に移動させる。
「……とりあえず、近くの公園に移動しよう」
先輩は私の手をひいて病院の向かいにある公園に
歩いていく。