君がいた夏
次の日
私は少し緊張をしながら病室の前に立つ。
先輩から紀衣さんが一人で来るようにという伝言を今朝聞いて
いまここにいる。
「失礼します」
そう声をかけてドアを開ける。
そこにはこないだより、清々しく見える紀衣さんが
穏やかに笑って座っていた。
「ごめんね、急に呼んで
「いえ…あの、今日はどうして?」
「まぁ、座って?」
そう言って紀衣さんはイスを差し出す。
「ありがとうございます」
私が座ったのを確認すると
紀衣さんは私の方に体ごと向ける。
「……こないだは、本当に……ごめんなさい…」
「え?」
紀衣さんは頭を下げる
そして下げたまま続けた。
「あなたに、怪我をさせてしまった………ほんとに、ごめんなさい……謝ってすむ話じゃないけど…」
「そんな…たいした怪我じゃないので」
「でも、傷つけたのは事実よ……何て言ったらいいか」
紀衣さんの頭は下がったままだった。
私は紀衣さんの肩を持ち顔をあげさせる。
「そんな、顔をしないでください……」
「……あなたは、あの頃と変わらず真っ直ぐね」