君がいた夏
「ずっと、中学の頃から、あなたが羨ましくて仕方なかった……その真っ直ぐな瞳が私にはなかったから」
「………」
「優ちゃんが、菜穂ちゃんをずっと好きだった事だって、私を家族として見てることも全部、わかりきってたことだったわ」
紀衣さんは少し視線を落とした。
「……あんなことしても、優ちゃんがふりむくわけ、ないのにね……わたしはもう、優ちゃんのそばにいれる資格なんてない」
私はその言葉に思わず紀衣さんの手をとった。
「そんなことないです!…先輩は、どんなに紀衣さんが離れようとしても、許してくれないと思います」
「…え?」
紀衣さんは目を丸くしてる
「だって、紀衣さんは…先輩の大切な人です。かけがえのない、大事な人なんです……それに、そばにいれる資格なんて、誰も持ってませんよ」
私は笑って紀衣さんを見つめる。
「紀衣さんがそばにいたいか、先輩がそばにいてほしいか、それが重要なんです。例えそれがどんな形だったとしても……」
「菜穂ちゃん……」
紀衣さんの綺麗な瞳から涙がこぼれる。
「私だって、たくさん紀衣さんに対して嫉妬しました……やっぱり、羨ましくて」
「私が?」
「はい。……だって、幼い頃の先輩も、私の知らない先輩もたくさん知っているんですから」