君がいた夏
「明美・・・そんな顔しないでよ。ね?」
「・・・・うん・・・・」
「ほら、今日たっぷり話聞いてもらうから」
「菜穂~・・・・」

明美は私に抱きつく。

こんなに思ってくれる友達がいる。
私を思ってくれる友達がいる。

それだけで、私は幸せだよ。



「菜穂、昼ごはん食べよー」
「あ、私、今日パンだから、ちょっと待ってて」
「了解」

昼休み。
私は購買に足を向けた。

「コロッケパンゲット!!」
「あれ。高嶋?」

私がパンを買って戻ろうとしたとき、屋上に続く階段の前で川上君に会った。

「川上君」
「コロッケパンか、いいなぁ」
「欲しい?」
「え?!いや、いいよ」
「ほんとに?」

私は川上君を見つめる。

「っ~~~・・・・やべ」
「え?」
「あ、いや。・・・高嶋は?食わねえの?」
「うん。焼きそばパンもあるから」
「・・・・じゃあ、もらう」
「ん」

私はコロッケパンを差し出す。

「さんきゅ」
「ううん。買いすぎたから」

ホントは食欲ないだけなんだけど・・・

「あ、優陽ぃ~~~!!!」
「・・・何」

私の胸が大きく跳ねた。

「どこ行くの?」
「関係ないだろ」

もしかして、近くにいた?

「高嶋?」
「あ、ごめん・・・」
「顔色悪いよ?」

私が少し後ろに下がった時

覚えのある香りが鼻をかすめた。

「あ」
「・・・・悪い」

優陽先輩と軽くぶつかってしまった。
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