君がいた夏
「歩ー、ちょっといいか?」
「おう。明美、今日は早く帰れよ」
歩はそう言うと席をはずす。
「ちょっとちょっと!めっちゃ良い感じだね!」
菜穂がそれを見計らったように私に耳打ちをしてくる
私は頬ずえをついて少し照れを隠す。
「ていうか、なんで歩、普通に私たちのクラスにいるのよ…」
「まぁまぁ」
菜穂は私の手を軽く叩いた。
そんな菜穂の指に指輪が光っているのを見つける
「指輪、綺麗だね」
「え、あ、ありがとう」
菜穂は照れながら指輪を触ってる
菜穂、可愛いな。
私も素直になれたらな…
ほんとは、歩の行動すべてが嬉しくて仕方ない。
「はぁ……」
ほんとに頭痛くなってきたな。
私は頭を抱えて机にふせる。
「明美、大丈夫?最近、弟ちゃんたちの世話で忙しいんじゃない?」
「お兄ちゃん、受験生になるから、迷惑かけられないから……」
「そっか…ってことは先輩もだ……」
菜穂はちょっと寂しそうな顔になる
私はうつぶせたまま顔だけあげて、菜穂を見る。
「大丈夫よ、先輩なら。菜穂のこと大好きだから」
「だっ、大好きって!」