君がいた夏


「あ、帰りのホームルーム始まる」

菜穂が話をそらすように席に戻ってく。
視界のはしに先生と入れ替わるように出ていく歩の姿がうつる。

「………ばか…」

好きじゃないなら、優しくなんてしてほしくないのに
でも優しくされていたいなんて思う私はずるい。

告白なんてできる勇気はない。
この関係を崩してしまうのが怖いから…

「はい、今日はこれで終わり。号令」

そんな声が聞こえて重くなる体を無理に持ち上げる。

「きりーつ、礼」

クラス中が一気に騒がしくなる。
はやく、帰ろう

私がバックに手をかけたとき
視界が一気に歪んだ。

やば……

そう思ったとき私の意識は途絶えた。




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