君がいた夏
「ん………」
白い壁
薬品の匂い
だんだんはっきりしてくる頭の中で
私はここが保健室なのだとわかってくる。
「お、起きたか?」
その声に私の意識はすぐに引き戻される。
この声…
「歩……?」
「悪いな、菜穂じゃなくて」
「菜穂は?」
「先輩と帰ったよ。ずっといたんだけど、帰した」
歩の声だけが聞こえる。
私はゆっくり体を起こそうとしたらまた頭がぐらりとした。
「寝てろ。疲れだってよ」
「………ダメ…行かなきゃ……」
「いくって、どこに?」
歩が無理矢理起きようとする私の肩をつかむ
「弟、迎えに行かなきゃ……お兄ちゃん今日、塾で遅くなるからご飯も作って……それで」
「ばか!そんなフラフラな状態で、何言ってんだ」
「……私が支えなきゃいけないの!」
私は歩の瞳を見つめる。
歩は少し驚いたような顔をして
少し考えて歩は私を見つめかえした。
「俺が行く…」
「え?」
私はびっくりして聞き返す。
歩はすでに準備を始めてる