君がいた夏


「明美のこと、よろしく頼む。あの子には休む場所が必要なんだ……気を抜いて、素直になる時間が…」
「ちょ、頭、あげてください」

明美の兄貴はゆっくりと頭をあげる

「安らげる居場所になってあげてほしい」
「………っ」

真剣なまなざしが、俺を見つめた。

この人は、明美をほんとに心配してるんだな…

「はい」

俺も、精一杯真剣に答えた。

「……ありがとう…………って、あ!!」
「え?!」
「あー、塾だ!話しすぎた!」

急にあわただしくなる明美の兄貴。

そういえば、天然だって優陽先輩が言ってたな…
これがモテ要素かもな

「それじゃ、歩くん、また遊びにおいで。弟たちが待ってるから」
「はい、ありがとうございます」

それじゃ、と言って足早に出ていった。
俺は伝票がないことに気づいた。

「……明美もやりそうだな…」

そんなことを考えて俺は店をあとにした。
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