君がいた夏
「紀衣?おーい、紀衣?」
「えっ?!はい、着いた?」
私は桐の声で我にかえる。
辺りを見回しても学校はない。
「ここ、駅じゃない」
「そだよ?」
「まさか………」
私が桐の顔を見ると桐はにっこり笑った。
「………海、行くぞ」
この笑顔だ。
私を止めてくれていた、柔らかい笑顔。
いつも、暴走しそうになる私をなだめてくれた後
桐はにっこり笑う。
私が泣いてるときとか、誰かを傷つけたときに
私に向けてしてくれる
菜穂ちゃんを傷つけたときも
病院で私は泣いてた。
その時も私の頭を撫でて
少し落ち着いた私に向けて笑ってくれたんだっけ。
「ばか」
私はそう呟いて先を歩く桐の後を急いで追った。