君がいた夏




「悪い、寝てた……」
「ううん、平気。ここで、あってるよね?」

結局、桐がまったく、起きなかったので
私は桐を引きずるようにして降りた。

たぶん、海があるのはここだったはず。

「うん、あってる。よく知ってたな」
「……見に来たことあるの。1度だけ、親と」

私はそう呟いた。
空気が暗くなるのが嫌だったから
すぐに、私は笑顔に戻して、桐の手をひいた。

「行こ」
「………あぁ」


海は駅からそう遠くなくて
すぐにたどり着くことができた。

「……うわぁ」
「………っ………」

私は目の前に広がる海に思わず声をあげる。

だけど…
海は綺麗。
綺麗なんだけど……

「…さ、寒い……」
「そうだな…」

やっぱり春はまだ早いか。
でも海、見れただけで気は楽になったかも。

「桐、足だけでもつかろ!」
「はぁ?」
「早く!」

私は靴と靴下を脱ぐ。
桐もしぶしぶ、私の後について靴と靴下を脱ぐ

「……つめてぇぇ!」
「あははっ」

足に海水をつけたとたん、予想以上の冷たさが
私たちの足を包む。

「このやろ」
「え?……きゃっ!」

私が笑ってると桐は水をかけてくる

「ざまーみろ」
「………っ~~~……」

私は負けじと桐に水をかける

「っ!」
「ざまーみろー」

その後も水のかけあいは続いた。
終わった頃には私たちはびしょびしょだった。


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