君がいた夏
「はぁー疲れた!」
「誰のせいだと思ってんだ……全く」
砂浜で足を投げ出して二人で並ぶ。
「……」
私は海を見つめる。
「………ねぇ、桐。私の話、聞いてくれる?」
「……あぁ」
桐は頷いた。
「……わたし、優ちゃんをずっと好きだと思ってた」
「?」
桐は首をかしげる。
私は少し微笑んで桐を見つめる
「……好きでいないといけないって思ってたの。離れてしまうんじゃないかって。親が死んで、優ちゃんもいなくなってしまうかもって」
「……うん」
「でも、それってただ、優ちゃんに対する仕返しだったのかも」
「……仕返し?」
私はうなずく。
「……ふられて、菜穂ちゃんにとられて、悔しかった。なんで、ずっとそばにいた私じゃないのって…」
「うん」
「嫉妬なんかじゃない…ただ、そばにいることを感じたかっただけ。私の弱さ。親がいなくなってっ……苦しくて、寂しくて……」
私は溢れる涙を止められなかった。
「……悲しかった………」
そうだ。
優ちゃんのことはふられたときに吹っ切れてたのに。
親の死で
誰かがそばにいてくれることを感じたくて
依存した。
でもそれは、ほんとの好きって気持ちじゃない。