君がいた夏
「バカだよね。私の周りにはそばにいてくれる人がいたのに……」
私は桐を見つめる。
「桐は、優ちゃんに依存してた私をいつも止めてくれてた。こんなダメダメな私でもずっと、支えてくれてた。今日だって……」
「………バカだな」
こぼれる涙を大きな手がすくいとった。
「……お前、あの菜穂とのことでさ、ずっと苦しそうで、いつも無理してる感じしてた」
「っ」
「……だから、海に連れてきた。少しは気晴らしになるかと思って…………なんてな、ただの言い訳だよ」
桐は少し笑ってから
私を見つめて頭を下げた。
「……悪かった。いつも……肝心なときそばに入れなくて……」
「え?」
「紀衣が辛いのわかってた…優陽もずっとどうしようもない気持ちを抱えてたのも気づいてたんだ…」
桐は頭を下げたまま続けた。
「……優陽は、お前のそばにいたいけど、菜穂を傷つけるんじゃないかって気持ちの間で揺れてた。俺が、もっと幼馴染みとして、二人を支えるべきだった。すべての原因は俺だよ……知ってて、知らないふりして逃げた」
「桐……」
「怖かった。何て言ったら正解で、何をしたら紀衣が解放されるのか……分からなくて」
かすれる声で桐はそう告げた。