君がいた夏


「俺は、あの頃の俺から、変わったよ」
「・・・」

先輩。
やっぱり・・・私

締め付けられたように痛む私の胸を押さえながら
私は先輩を見る

目があった。

沈黙が流れる

「だけど菜穂ちゃんは変わらないでいてほしい」
「・・・・はい」

素直にうなずけた。
だって少しだけど
先輩の目に優しさが灯ったから。

私の返事を聞いて先輩は
笑って、私の頭を撫でた。

そして
袋を差し出す

「これは?」
「コロッケパンやるよ、俺食わねーから」

え?
だけど先輩は、確か・・・

「コロッケパン、嫌いなんじゃなかったでしたっけ?」
「っ・・・間違って買ったんだ、いいから食え。力でねーから」

先輩は無理やり袋を押し付けると立ち上がる。

「じゃあな。5時間目さぼるなよ」

そう言って先輩は屋上を出た。

「・・・嘘だ」

ホントは川上君にあげたの見てたんでしょ?
私がコロッケパン好きなの覚えててくれたんだ。

「・・・・ヤバ・・」


胸の音がうるさい。
先輩の声が頭にこだましてる
胸がきゅうってなる。

どうしよう。

やっぱり、私




――――先輩が好きだ




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